Eyes on Me







Act.33 : I can easily eat it when I "love" it

 禁 断 区 





 当然、と言うべきなのか、出だしから予想外であった両親の反応には、予想外の事態が伴った。
身重の彼女は彼から引き離され、隔離されてしまったのだ。
屋敷のどこかにいるはずなのに、どうしても彼には見つけることが出来ない。
 ふつふつと沸き上がる焦躁と怒りを抑えながら、自分で見つけることが出来ないのであればと、真正面から義父に突っ掛かるが、それは平行線のまま一歩も状況が変わらなかった。
結婚と出産の為、彼女の解放を求める彼と、頑としてそれを受けいれない両親。


「何度言えば分かるんです!?」
「お前達こそ何を考えている?!」


 毎日のように繰り返される応酬。
彼と親の怒鳴り合いは、日に日に声の大きさも回数も増していった。
 何を言っても「姉弟」と理由で突っ撥ねる親と、「あくまでそれは義姉弟」だと対抗する彼。


「いいですか?彼女は貴方と先妻の娘で、僕は後妻の連れ子だ。こんなに良くしてもらっておいて、この上貴方の娘を奪うことは詫びるとしても、一人の命を殺してまで反対する理由なんですか?姉と弟だからなんて理由だけでは、僕は納得など出来ません。」
「お前は何も分かっておらん。母親というものは、公的に命を堕ろして許される生き物だ。父親の意見など必要は無い。」


 苛立つ彼に、義父は冷徹な声を返す。
 ここまで頑なな人だとは知らなかった。
 普段から理解のある人だと思ってただけに、そして本心を言ってしまうなら、だからきっと許してくれるだろうと甘い期待を抱いていただけに、その豹変ぶりに驚かざるをえない。
堂々巡りに終る怒鳴り合いに疲れて、彼はどさりとソファーに沈み込みながら、無造作に頭を掻いて尋ねる。


「彼女はどうしているのですか?」
「大事無い。」


 大きく呼吸を整えて応える義父に、彼はそれ以上何も言わなかった。
何を言っても受け付けない義父と、よそよそしく視線を向ける母親。
腹立たしさと不愉快さは残していても、こうなった以上は長期戦は覚悟の上だった。
 何がなんでも、納得させてやる、と。
彼は心に誓って、テーブルの上に用意されていた、冷めきった紅茶を一息に飲み干した。






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2008/09/29   再UP




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